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Wi-Fiによる人流データをTableau Publicで公開、データがもたらすパワーを改めて実感


レポーティングのサービス化を目指しTableauの活用をスタート

COVID-19で変化した人の流れをTableau Publicで可視化して公開

人流データの価値を理解してもらう上でも大きな効果を発揮

国際航業株式会社は1947年9月に設立された、地理空間情報のパイオニア企業です。宇宙や空、地上からセンシングする技術を活かし、公共・民間問わず、計測からコンサルティング、地理空間情報のビジネス利活用に至るまで、幅広いサービスを提供。また最近では静的な統計情報だけではなく、人流データ等のダイナミックデータを用いた新規事業の立ち上げにも取り組んでいます。その一環として、フリーWi-Fiのアクセス状況をベースとした「Wi-Fi人口統計データ」を用いた、商圏分析情報を提供するサービスを実用化。そのデータの可視化やインサイトの提供ツールとして、Tableauが積極的に活用されています。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大後は、このデータをもとにした「Wi-Fi人口統計データから見える主要都市の人流変化」を無償公開。「STAY HOME」の掛け声のもと、外出自粛や営業自粛によって人の動きがどのように変化しているのかを、Tableau Publicによって可視化しています。

最終的にTableauを採用した理由は、Tableauがグローバルブランドであることと、全体的なUIやデザインの一貫性、そしてデータビジュアライゼーションに対する考え方に共感できたことです。またTableau Cloudを活用することで、レポーティングをオンラインサービスとして提供することも可能になると考えました

レポーティングのサービス化を目指しTableauの活用をスタート

国際航業がTableauの導入検討を開始したのは、2018年10月。複数の分析ツールを比較検討した結果、2019年4月にTableauの導入を決定しています。その目的について、「Wi-Fi人口統計データ」を用いた商圏分析情報サービスを提供するLBSセンシング事業部ロケーションサービス部 プラットフォームG/技術企画Gの渡邊 剛史氏は、次のように説明します。

「当社ではビッグデータを解析し、その結果のレポート作成を顧客の店舗毎に作成するという業務を行っていますが、人流データの場合にはデータの切り口が多く、異なる切り口でレポートを作成してPDFとして印刷する作業が煩雑になっていました。この作業の簡易化・効率化が、Tableau導入の最大の目的です」。

最終的にTableauを採用した理由は、Tableauがグローバルブランドであることと、全体的なUIやデザインの一貫性、そしてデータビジュアライゼーションに対する考え方に共感できたことだと、渡邊氏は語ります。「例えばビジュアライゼーションの方法として円グラフは推奨しない、使用する色数は何色以内にすべきなど、Tableau社自身が明確なポリシーを持っています。また製品自体も考え抜かれた上で開発されたことが、はっきりとわかります」。

レポートを紙で提供するだけではなく、オンラインサービスとして商品化することを目指していたことも、Tableau導入を後押しした要因になったと説明。Tableau Cloudを活用することで、このようなサービスをスモールスタートできそうだと考えたと言います。

導入当初は使い方を十分に理解せず、「何だかわからないけれど勝手に集計してグラフが描けるツール」といった感覚で使い始めましたが、分析結果がなぜそうなるのかという検算を行いながら、詳細な使い方をマスター。約3か月で使いこなせるという感覚になったと振り返ります。

「当社は地理情報システム(GIS)の開発を長年手掛けているため、空間情報の扱いができることは必須条件でしたが、Tableauは継続的なバージョンアップによって、空間情報がより扱いやすくなっています。また非常に充実した教育体制があることも魅力の1つです。オンラインで視聴できる動画はもちろんのこと、よりきめ細かいスタディが可能なプロフェッショナルサービスも用意されており、利用にあたってのバックアップ体制が整備されています」。

COVID-19で変化した人の流れをTableau Publicで可視化して公開

「Wi-Fi人口統計データ」を用いた商圏分析情報の提供サービスはすでに始まっていましたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大は、そこに新たな活用方法をもたらすことになります。COVID-19の感染拡大を防止するには密閉・密集・密接を防ぎ、人と人との距離を取る「ソーシャルディスタンス」を確保する必要がありますが、Wi-Fiで計測した人口統計データはその傾向を把握する手段になると考えられたのです。

Wi-Fiによるセンシングデータは、人々がフリーWi-Fiを提供する施設や飲食店等に入ったタイミングで生成され、行動ログとして蓄積されます。つまり人々の活動に関するダイナミックな状況を示すデータなのです。またWi-Fiによる行動データは大まかな場所だけではなく、訪問した店舗まで特定でき、同じ商業施設に月に何回訪問しているのか、どこから訪問しているのかなどまで把握可能です。なお国際航業が扱うデータは携帯電話の契約者情報等に紐づくものではなく、利用許諾を得たユーザーのフリーWi-Fi利用履歴を集積して統計処理したものであり、個人情報を含まないプライバシーに配慮したものになっています。

「このようなデータを活用すれば『STAY HOME』の掛け声のもとで、外出自粛をしている人々や営業自粛をしている店舗の実際の状況を、可視化できるはずだと考えました。これによって皆が協力して頑張っていることを、目に見える形で示したい。このような想いから、COVID-19関連のダッシュボードの公開に踏み切りました」。

2020年4月14日、最初にTableau Public公開されたのは「Wi-Fi人口統計データから見える主要駅の活動人口推移」です。その後、都市間移動の増減を表すダッシュボードを公開。そしてさらに、業界ごとの店舗利用状況を追加しました。

「提供しているデータの1つは、全国の主要駅周辺1000mにおける人流計測データです。駅周辺で活動している人々の様子が可視化されています。これによってSTAY HOMEが叫ばれ始めてから、多くの繁華街では夜間の活動人口が大幅に減っていることが読み取れ、飲食店や娯楽施設の利用が自粛されている様子がわかります。また、Wi-Fiのアクセス状況から推測した業界ごとの店舗利用状況では、営業自粛したデパートなどで大幅に来店者数が減少しており、逆にドラッグストアでは必要に迫られて多くの方が来店したことも見て取れます。さらに緊急事態宣言が解除された後は、人々が街に戻ってくる様子もリアルに感じていただけます」。

Wi-Fiによるセンシングデータを活用すれば『STAY HOME』の掛け声のもとで、外出自粛をしている人々や営業自粛をしている店舗の実際の状況を、可視化できるはずだと考えました。これによって皆が協力して頑張っていることを、目に見える形で示したい。このような想いから、COVID-19関連のダッシュボードの公開に踏み切りました

人流データの価値を理解してもらう上でも大きな効果を発揮

このようなデータをTableau Publicで公開したことも、今回の取り組みにおける注目ポイントだと言えるでしょう。

「COVID-19の状況は毎日のように変化しており、人流データも刻々と変化します。これをすぐに伝えるには、Tableau Publicが適しています。閲覧者自身が興味ある駅を選択し、日々変化するデータを自ら探索できるからです。これは非常によい体験価値を提供できるものだと感じています。実際にデータ解析を行っている私自身も、日々目にするニュースの内容とTableauの分析結果が一致していることに、正直驚いています」。

このような取り組みは、人流データの価値を理解してもらう上でも、大きな効果を発揮しています。これまでは社内でもなかなか理解してもらえないという状況でしたが、最近では社内はもちろんのこと、社外からも「このデータをマーケティング分析に使えないか」という問い合わせが増えていると言います。

現在Tableau Publicで公開しているダッシュボードでは、業界毎の来店状況分析を都道府県毎に可視化しています。このような調査はそう簡単に行えるものではなく、国際航業のWi-Fiによるセンシング技術の特長をうまく活かした事例と言えます。非常に大きなデータになるため一般公開はしていませんが、各店舗のWi-Fi利用状況までドリルダウンして見ることができるデータになっていると渡邊氏は説明。これを深掘りしていくことで、COVID-19の影響だけではなく、そのエリアにおける街の変化や、特定のチェーン店への来店動向などを知ることも可能になると語ります。

「データはさまざまな事象の結果であり、その結果を分析することで現状を客観的に理解でき、将来の予測にも役立てることが可能です。このようなデータの活用は、政策や事業のPDCAを効率的に回す上で、重要な役割を果たすはずです。今回公開したCOVID-19関連のダッシュボードには、これまでデータ分析とは縁のなかった方も多くアクセスし、データがもたらすパワーを実感したのではないでしょうか。私たちはこれからも取得した膨大なデータを、Tableauのようなツールや技術でつなげていくことで、新たな価値を生み出し続けたいと考えています」。

COVID-19の状況は毎日のように変化しており、人流データも刻々と変化します。Tableau Publicを利用して、閲覧者自身が興味ある駅を選択し、日々変化する人流データを自ら探索できるようにしました。これは非常によい体験価値を提供できるものだと感じています