データによるコラボレーションについて知り、実現するために

適切なツールと適切なデータへのアクセスを提供して、人々が適切な環境で作業できるようにすることで、組織は驚くような成果を得ることができます。

編集者注: これは初め Forbes (英語) で公開された記事の再掲載です。

データは、私たちが想像することも、使い切ることもできないほど無尽蔵に存在します。しかし、ここで大事なのは、データの価値は、従来の原材料と同じように、加工することで得られるものであり、個々のデータポイント自体から得られるものではないということです。たとえば、データの蓄積には、重要性があまりなく、役立つこともほとんどありません。 

Tableau の製品管理担当シニアディレクターを務める Matthew Miller が、すべての美しいデータダッシュボードが役立つ結果を生み出すと思わないよう人々に訴えているのは、そのためです。

Miller は、「データとインサイトをどれだけ大切にしていたとしても、インサイトだけで組織に変革はもたらされない」と語っています。そして、「人々を評価する際の基準となるのは、参照したダッシュボードの数でも、作成するダッシュボードの数でも、データウェアハウス内に格納されているデータのペタバイト数でもありません。重要なのは、組織のパフォーマンスを促進しているかという点にあります」と述べています。

適切なツールと適切なデータへのアクセスを提供して、人々が適切な環境で作業できるようにすることで、組織は驚くような成果を得ることができます。これは、Covid-19 発生初期の数か月に取られた対応で顕著に見られました。先行き不透明かつ急速に変化する環境でも、人々が情報に基づいた意思決定を行うことができた組織は、有利な立場にありました。何年にもわたるデジタルトランスフォーメーションのロードマップを、たったの数週間または数か月という期間に短縮した組織でさえも、極めて重要な局面で競合他社の先を行く意思決定を行うことができました。

リーダーは、これらの教訓を礎とし、文化的な基盤を構築することで、生産性が高く価値のある、データを中心としたコラボレーションを実現することができます。真の価値はそこに存在します。つまり、真の価値とは、データレイクや定型化されたビジュアライゼーションに存在するものではなく、創出されるものなのです。

発信番号表示サービスを例に、データによるコラボレーションを理解する

有線電話サービスが登場した初期の頃、電話会社は顧客と電話番号の詳細なデータベースを保持していました。これらのデータは、顧客への請求、通話のルーティングのほか、電話帳やオペレーターによる電話番号案内などの付加価値サービスの提供のために内部で使用されていました。毎月発行される請求書には通常、遡及的な分析が必要な場合に備えて、1 か月間でかけられた電話番号のすべてが記載されていました。

その後、発信番号表示サービスが登場しました。発信番号表示サービスによって新たに作成されたデータはなく、単に、誰が電話をかけているのかを知ることで電話に出るかどうかを判断するという意思決定ポイントで、ユーザーに対してタイムリーに既存データが表示されるようになりました。この情報を使うために、電話の利用者が各自のワークフローを大きく変更する必要はありませんでした。そして今日、この情報は当たり前のように電話の画面に表示されるようになっています。誰もボタンを余計に押したり、特別なデータ検索をしたりする必要はありません。

エンドユーザーが、必要とするまさにその瞬間に、役立つ情報を得ることができる。これは、生産性の高い データカルチャーを浸透させようとしている組織のすべてが目指すべき結果であると、Deloitte 社でアナリティクス & コグニティブのオファリング責任者を務め、同社の顧客に分析と BI ソリューションに関するコンサルティングを提供している Richard Starnes 氏は語っています。 

同氏はまた、「データドリブンな組織になるには、データを使うことで創造性と効果を発揮できるユーザーの手にデータが行き渡るようにする方法を見出す必要があります」と述べています。

データ調和に見られる特徴

データで何をすべきかを明確に理解しているユーザーにデータを提供するためには、まず実用的なワークフローを構築する必要があります。また、説得力を持ってデータを活用する組織では、複雑なワークブックではなく、スナップショットに近いものが作成されるでしょう。

データドリブンな企業で見られる 3 つの特徴を以下にご紹介します。

  • インプットとアウトプットの好循環

Miller は、分析サイクルを反復可能なプロセスに凝縮することを推奨しています。つまり、1 つの情報がアクションのきっかけとなり、プロセスを発動させ、それがまた新たなデータを生み出し、アクションを起こすきっかけとなるというプロセスです。この型に当てはまらない重要な分析プロセスが存在する可能性もありますが、それが例外ではなく、通常のプロセスである場合、容易に達成できる課題が放置されていることを示している可能性があります。

  • 既存の作業方法を反映したデータワークフロー

最も優れたデータドリブンなプロセスは、人々が手掛ける職務と責務をサポートし強化するだけでなく、彼らが日々解決に努める一般的な問題を簡素化できる必要があります。Salesforce 社の分析担当シニアディレクターである David Gibbons は、「人間のコラボレーションパターンは、調和を実現するデータシステムを設計する方法を明らかにする」と語っています。また、「データの形によって、チームが業務をより効果的に遂行する上で誰に連絡し、やりとりをするのかを把握できる場合があります。そして、コラボレーションの最中に必要に応じて分析をどこにでも埋め込むことができる、柔軟性のあるデータプラットフォームがあれば、成果を最大化できるとともに、プロセス内でのデータの調和を高めることができます」と述べています。

  • 簡単に利用できるインサイト

一部の組織は、発見した重要な結果を示すのに、複数のタブがある複雑なワークブックを使用するのではなく、利用が簡単で、あらゆるレベルでの理解を可能にするシンプルなダッシュボードを作成しています。また、投資ポートフォリオ内の株を追跡するように、主要な 指標を追跡できる機能も活用しています。「この情報で何をすべきか」という問いに答えることに主に注力しているユーザーの場合は、人口知能 (AI) を使うことで複雑なデータからすぐ次のステップを導き出すことができます。「すべてのビジネスユーザーがデータセット全体を見たいわけではありません。BI (ビジネスインテリジェンス) プラットフォームに AI 機能が組み込まれるようになったことで、ユーザーは具体的な推奨事項を得て、より迅速に意思決定ができるようになりました。これは、取引の成立を加速化したり、顧客ケース解決時の満足度を向上したりといったメリットにつながります」と Gibbons は述べています。 

リーダー向けチェックリスト: データの有効活用に向けた 4 つのステップ

データの有効活用は、シニアリーダーがそれを優先事項とし、ビジネス成果を促進するために自身の業務でいかに分析を活用すべきかを示した場合、より簡単に実現できます。

1.他者の知識を共有し活用する

データを中心とした効果的なコラボレーションを実現する上での障壁の 1 つに、他の同等の人々と比べて自らを評価するということがあります。他の分野では、製造における欠陥率の低下やサプライチェーンの効率的な実行につながるプロセスを評価して模倣することが簡単です。データはそこまで確実性のあるものではなく、特定のチームや企業にとって最適なソースやスキルセットが、他のチームや企業では同じような効果を発揮しない可能性があります。 

これらの課題を克服するには、データによるコラボレーションの取り組みでの受容性を最大限に高め、プロセスや結果について話し合い改善する早期の段階で協力者を関与させる必要があります。Starnes 氏は、効率的で効果的、かつ信頼できるデータプラットフォームを実現するためのボトムアップの取り組みを支援するには IT 部門が通常最適である一方で、ビジネスリーダーはトップダウンの取り組みにより、データの提供とコラボレーションの最終段階の裏側で資金と戦略的なサポートを提供することができると述べています。

2.広範な知識とスキルに対応する

無尽蔵とも思えるデータソースと分析ツールへのアクセスをすべての従業員に提供しても、全員が同じように効果的なナレッジワーカーになるわけではありません。このアプローチによって、熟練のデータサイエンティストの役に立ったり、データ精通者が頭角を現せるようになったりする可能性がありますが、これはコラボレーションする上で最も効果的または連係のとれた方法とは言えません。 

「大規模なデータウェアハウスを持ち、分析に多大な投資をしているにもかかわらず、成功に至っていない組織がたくさん存在します」と Miller は述べています。

そのようなアプローチではなく、スキルのある従業員にデータを使って解決する必要がある問題を明確に示してもらい、エキスパートにそれを支援する方法に注力させるようにする必要があります。 

3.担当者がアドバイスを求めることができる場を設ける

人々のスケジュールにトレーニングをさらに追加するのではなく、従業員による質問を促せる場を設けましょう。これには、さまざまなスキルを提供し得る協力者が交代で参加する、チーム用のバーチャルスペースや予約不要のクリニックなどが考えられます。

データコミュニティが集まることのできる場を設ける際には、柔軟性の高いプラットフォームを使うことが極めて重要です。通勤や出張がなくなり、オフィスを利用しなくなるなど、今年突然起こった変化から学んだように、データ利用におけるトレンドや分析のニーズは変化します。2019 年には、より小型の画面やモバイルデバイスでより多くのデータが利用されるようになるというトレンドが強調されていましたが、この数か月で、デスクトップ画面で利用されるデータの割合が著しく増加しています。 

4.簡単に質問し、検証できるデータにする

多くの劇的なデータストーリーや分析ストーリーは、革新的な気づきや予想もしなかった驚きの発見に焦点を当てています。現実世界はそれほど劇的なものではありません。実際には、データは十分な根拠に裏付けされた直感や前提を確認するためによく利用されます。 

Miller は、「大半の経営幹部は、経営状態について直感的に把握しているため、大抵の場合、分析を見てもそれほど驚くことはありません」と述べています。「そのため、彼らが数字を見て、それがどこから来たのか疑問を抱いた場合には、そのソースを追跡できることが必要です」とも述べています。

これを実現するうえで確実かつ効果的な方法の 1 つは、やりとりするすべてのデータと分析を理解しやすいものにすることです。これは、データソースを認証することで達成できます。つまり、効果的に承認マークを付けることで、そのデータが最新かつ信頼できるものであることを示せます。また、そこには、意思決定が滞ったり、説明を待つ時間のないユーザーがインサイトを破棄してしまったりすることがないよう、タイムリーに応答や説明を提供できるようにするための文化的なサポートやインセンティブも必要となります。

極めて重要な事実や最も価値の高いインサイトを発見することは、コラボレーションを要するプロセスです。 

最近収めた成功でデータと分析がどのような役割を果たしたかを、その担当者に尋ねてください。また、最も満足度が高かった、または低かったデータエクスペリエンスについて話し合い、共通点を見出してください。 

より多くの人々がデータを活用できるようにする方法を確認し、データドリブンなコラボレーションのストーリーをご覧ください。