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Tableau 活用の全社的拡大で JAL フィロソフィーの一つ「最高のバトンタッチ」を実現|日本航空株式会社


コミュニティを基盤とするナレッジ・スキル共有で活用事例が続出!

導入の背景

Tableau の全体的活用でより高度な「最高のバトンタッチ」を実現

JAL のサービスや製品に携わる全従業員が持つべき価値観として 2011 年に策定された「JAL フィロソフィ」。その中の 1 つ「最高のバトンタッチ」とは、従業員同士がグループ内の企業・部門・職種の垣根を越え、バトンをつなぐように連携することで、顧客に安全かつ最適な空の旅を提供する、という考え方です。

それが“ 行動哲学”として全社的に浸透していることは、グループ内の至るところで行われている Tableau を活用した取り組みと、その土台となっている組織的・人的なつながりに端的に現れています。以下で詳述するように、JAL グループでは、Tableau をいわば“ 共通言語”として組織・従業員間の連携が強化され、整備・運航・接客・安全保安などの各業務領域において、Tableau を使ったデータの可視化・分析によるさまざまな業務改善や変革が進められています。それによって、航空機の万全の準備から安全・快適な航行、各顧客に寄り添うツアーの提案・販売までを JAL グループ全体が一丸となって提供するという、まさに「最高のバトンタッチ」をより高度に実現しているのです。

Tableau 活用の推進役の 1 人である日本航空株式会社 IT 運営企画部技術戦略グループの山崎喬氏は、Tableau の利用が拡大していった経緯をこう説明します。

「最初はグループ内の少数の有志による『データカレッジ』という取り組みから始まり、現在は『DANCU(Data Analytics and Culture Unit )』というグループ横断でデータドリブン経営を推進する組織に発展しています。そのほか、200 名を超える Tableau の社内ユーザー会『tablab』のメンバーによる相互支援が、グループ全体の活用促進において大きな役割を果たしています」(山崎氏)

Tableau の導入・運用環境について

操作性の高さと習得・システム連携の容易さが決め手

もともと JAL グループでは、ある BI 製品を全社的に利用していました。ただ、ビジュアライゼーションの機能が弱く、各組織・個人がデータをダウンロードして Excel などで分析・共有していたため、各所で複数名が似たような作業を実施するなど、属人的で非効率的なケースが多かったそうです。

そうした状況を受けて JAL グループでは、社内のデータ分析基盤を更改するタイミングで、BI 製品についてもモダナイズを検討し、Tableau の全社導入を決定しました。選定に至った背景について、日本航空株式会社運航安全推進部品質管理グループの我如古聡志氏はこう話します。

「私は Tableau の能力と潜在的な可能性について疑う余地がないと感じ、すでに個人的に利用し始めていたのですが、実はそういう従業員が各組織に複数名いました。つまりTableau に関しては、各部と連携してスピーディに展開できる下地があったわけです」(我如古氏)

そのほかにも、操作性が高く、各組織のユーザーが十分習得可能なツールだとハンズオンを通じて実感できたことや、コミュニティや活用に関する情報が豊富で、社外ネットワークを活用した展開が可能であること、さまざまなシステムとの連携が容易であることなども選定の理由となったそうです。

Tableau の能力と潜在的な可能性について疑う余地がないと感じていました。すでに個人的に利用し始めていたのですが、実はそういう従業員が各組織に複数名おり、スピーディに展開できる下地がありました。

JAL グループ各社の Tableau 導入・運用環境・効果

株式会社 JAL エンジニアリング

航空機故障予測モニタリングツールの展開の迅速化・脱属人化

「最高のバトンタッチ」に貢献するTableau を駆使した業務改善は、JAL グループ内各社で行われています。株式会社 JAL エンジニアリングにおける航空機故障予測モニタリングツールの展開の迅速化・脱属人化は、その代表的な一例です。Tableau 導入前に抱えていた課題について、同社技術部システム技術室信頼性管理グループの原田邦治氏はこう説明します。

「私たちは、フライトデータを活用して航空機の故障を予測するモデルを開発し、モニタリング業務に展開しています。ただ、以前は開発したロジックの実装に Excel マクロを利用しており、かつ VBA の知識を持つ者が少なかったため、作業が属人的になりがちで、設計・テスト・修正に非常に時間がかかっていました。また、Excel のグラフなので複雑なことはできず、見栄えやインタラクティブ性が貧弱という問題もありました」(原田氏)

Tableau の導入によって、そうした課題は一気に解決されました。ロジックの実装に要する日数は、約 10 営業日から約 1 営業日へと 10 分の 1 に短縮。また、展開する Viz 数は約 100 個に達していますが、Tableau はスプリクトが不要のため、誰でも簡単に維持管理や要件変更を行うことができます。

「使い勝手が劇的に向上し、ユーザーがデータのトレンドから判断してアクションを取るまでの時間を大幅に短縮できました。また、ユーザーが自ら操作できるようになったことで分析の幅が広がり、これまで気付くことが難しかったリスクに容易に気付けるようになったことなども、機材品質の向上に寄与しています」(原田氏)

そうした成果を踏まえ、同社 IT デジタル推進部の東島誠氏は、力を込めて次のように話します。

「ダッシュボードを作るだけなら誰でも、また他のツールでもできます。しかし Tableau は、『私はこういう切り口で見たい』という各人の望む分析軸をそのままダッシュボードで表現し、皆でそれを見ながら現状と理想の業務フローについて議論を深め、改善につなげることができます。そのように、業務改革の強力なツールとなり得る点が、Tableau の一番良いところだと感じています」(東島氏)

 

故障予測

故障予測

 

日本航空株式会社 運航訓練部訓練審査企画室

着陸ルートの可視化によるフライト前のイメージ共有

一方、日本航空株式会社の運航本部では、空港の着陸ルート可視化によるフライト前のイメージ共有に Tableau を活用しています。各空港への航空機の着陸ルートは、天候状況や管制からの指示などで随時変更されます。そのためパイロットは、事前にいくつかのパターンを想定して進入経路と高度を算出し、同乗しているパイロット同士でイメージを共有しておく必要があります。同社運航訓練部訓練審査企画室の池下晴美氏によると、その際に Tableau を利用することで、事前準備の作業効率向上や見える化による共有のしやすさ、相互理解の正確性が大幅に向上したそうです。

「従来、着陸ルートの種類によっては、事前準備としてパイロット個人が手書きでルートを地形図にプロットする作業をしていました。この作業の場合、コースや高度に若干の個人差が生じたり、誤りに気付かなかったりする恐れがあります。また手書きのため多大な作業負荷を要し、良いものができても作業による誤差があるため、他のパイロットと共有しにくいという問題がありました」(池下氏)

Tableau を利用することで、作図・計算の負荷は大幅に軽減されました。その結果、たとえば 2022 年 7 月の桜島噴火の際、噴煙を回避して鹿児島空港へ着陸するルートを短時間で作成・共有するなど、より迅速かつ適切な対応が可能になりました。

「パイロット間でデータを共有することにより、ルート設定に誤りがないかを検証しやすくなり、共通のイメージを確立して業務をより円滑に、的確に遂行できるようになりました。また、最新の衛星画像の利用によってルート上の建築物や地点目標等がリアルに表現されるなど、見栄えやインタラクティブ性が劇的に向上したことは、ターンのポイントや高度などのイメージをつかみやすく、また複数ルートを比較できるなど、運航の安全性に直結するメリットとなっています」(池下氏)

 

着陸ルート

着陸ルート

 

株式会社 JAL ナビア

対面カウンター利用者への対応品質向上

顧客への対応品質の向上という面でも、Tableau は威力を発揮しています。JAL 唯一の対面カウンターとして、航空券の購入・問い合わせなどに対応する JAL プラザ。その運営を担う株式会社 JAL ナビアでは、東京センター JAL プラザ事業室総務グループの鈴木綾氏が中心となって、Tableau による業務改善を進めています。

「以前から来店者・接客に関するデータは取っていましたが、Excel での集計・分析に時間がかかり、個々のスタッフの対応品質向上にはつなげられていませんでした。Tableau  導入後、全 40 名のスタッフの接客データを一瞬で集計可能になり、スタッフ別の接客件数・時間等のデータを踏まえた、個人のスキルアップにつながるブリーフィング等を実施できるようになりました。また、来店の多い時間帯や処理時間のかかる案件を洗い出して人材配置を最適化したり、来店目的の傾向をつかんで的確なサービスを提供したりする取り組みも始まっています」(鈴木氏)

定量的にも、たとえば Web 関連の問い合わせ対応に時間がかかっているというデータから、SMS ・QR を事前に用意して接客に取り入れた結果、平均接客時間が 31 分 52 秒から 22 分 29 秒へと 10 分近く短縮されたなどの効果が出ています。

 

日本航空株式会社 安全推進部安全企画グループ

航空安全・保安情報のモニタリング強化

JAL グループ全体の航空安全・保安を総括する、日本航空株式会社安全推進部安全企画グループでは、Tableau を活用して安全・保安情報のモニタリングを強化しています。同グループの檜垣大祐氏は次のように話します。

「JAL グループでは全社的に、各部門で Excel 等で管理されている情報を集約するシステムを導入しましたが、統計分析機能が備わっていません。Tableau によって、集約された膨大なデータを誰でも容易に取り扱えるようになりました。Viewer ユーザーと議論しながらブラッシュアップしていった各種ダッシュボードと、そこから作成される資料は、今では経営会議を含む多くの会議で利用されています」(檜垣氏)

たとえば会議中に質問があったとき、Tableau なら以前のように持ち帰って検討することなく、データを見てその場で回答でき、円滑に議論を進められる。檜垣氏は、それこそがTableau の最大のメリットだとした上で、こう続けました。

「航空会社にとって最も大切な『安全』を脅かすリスクを見つけて的確に対処するためには、事象の分類方法などさまざまな試行錯誤を重ね、PDCA を回していく必要があります。Tableau によって、迅速に可視化・分析することによって、この PDCA が活性化させることが出来るようになったことは、私たちにとって非常に大きな前進だと考えています」(檜垣氏)

グラフ同士がインタラクティブに動き、気になるところをクリックすると、どんどんブレイクダウンして分析できます。思考が止まらず、自分の質問に Tableau が答えてくれることに感動しました。

JAL グループの今後の展望

コミュニティを基盤に全社的な Tableau 活用を推進

2019 年の導入からわずか3年、JAL グループ全体でこれほど Tableau の利用が拡大している背景には、推進役の山崎氏が冒頭で触れた通り、データ活用を推進する組織「DANCU」と社内ユーザー会「tablab」のメンバーによる、日常的かつ積極的な活動があります。「DANCU」の約 35 名の中心メンバーの1人である、日本航空株式会社 IT 企画本部 IT 運営企画部技術戦略グループの田村哲史氏は言います。

「私は DATA Saber の資格を取得し、『Tableau でこんなことをしたい』というユーザーからの要望に応え、支援を行っています。私自身、Tableau の使いやすさに感動していますし、『データがあればとりあえず Tableau に入れてみよう』というマインドでいろいろな人にお勧めしています」(田村氏)

国内・海外ツアーを提供する株式会社ジャルパック顧客販売部マーケティンググループの大野雅子氏は、まったく知識のない状態から Tableau を使い始め、今や「DANCU」の中心メンバーとして活動するまでになりました。

「わからないことを Tableau のグループチャットで質問すると即座にメンバーから回答があるので、今では Tableau をかなり使えるようになり、学んだことを自社に持ち帰って展開しています。コロナ禍でツアー実施の可否等の状況が刻々と変わる中、予約データを可視化して次の施策につなげられるようになるなど、Tableau には本当に感謝しています」(大野氏)

同じく「DANCU」の中心メンバーである、クレジットカード事業を展開する株式会社ジャルカードデータ戦略室の内海聖也氏も、Tableau のコミュニティで得たことを自社の業務改善に活かし、社内のTableau ユーザーをどんどん増やしているそうです。「お客さまを理解する上でデータ分析はきわめて重要ですが、当社だけでは思いつかないようなJAL グループ内のデータを活用できるようになったのは、『DANCU』『tablab』をはじめとして横のつながりがあったからこそ。普通なら業務上の接点があまりない人たちと、Tableau という“ 共通言語”でつながることのできる、すばらしいコミュニティだと感じています」(内海氏)

まさしく「最高のバトンタッチ」を体現する、JAL グループにおける Tableau の全社的な活用。最後に山崎氏は、今後の展望についてこう話しました。

「最近 JAL グループ内で、『えっ、そういったところでも活用できるのか!』というTableau の活用事例がどんどん出てきており、予測不能なほど利用が伸び始めています。今後は JAL グループ内だけでなく外部とも連携し、今までにないデータの組み合わせで新たなビジネス価値を生み出すなど、さらにレベルアップしていきたいですね」(山崎氏)

さまざまなデータが可視化されることによって、企業・部門・職種を越えた共通認識を持てるようになり、コミュニケーションが活性化しました。今までにないデータの組み合わせで新たなビジネス価値を生み出すなど、さらにレベルアップしていきたいです。

※ 本事例は2022年7月時点の情報です

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