ゲーム開発の “匠の技 ”を支えるデータ活用|株式会社カプコン


プレイデータ分析の作業時間を10分の1に短縮

導入の背景

分析の依頼増加により、小規模向けのデータ分析環境では対応が困難に

サバイバルホラージャンルを確立した『バイオハザード』シリーズや、世界的ヒットを飛ばし続ける『モンスターハンター』シリーズなど、数多の人気コンテンツを世に送り出してきた大手ソフトウェアメーカー、株式会社カプコン。常に斬新な企画やアイデアでユーザーの予想と期待を上回りながらも、同社の作品であることを強く感じさせる、オリジナリティあふれるゲームソフト開発力を最大の強みとしています。1983年の創業以来、開発部で培われてきた技術と経験に裏打ちされた “匠の技 ”。それが、40年におよぶ安定した企業成長と、日本の「カプコン」から世界の「CAPCOM」への飛躍を支えてきたのです。

一方で同社は、匠たちの力を最大限に発揮できるよう、各種データの活用にも積極的に取り組んでいます。ゲーム開発の現場では、開発中および製品版タイトルの詳細なプレイデータを可視化・分析し、ゲームバランスの調整やUIの改善等につなげています。また、営業・マーケティング活動等においても、2020年に開始した共通アカウント管理サービス「CAPCOM ID」を通じて蓄積される顧客の情報を分析して活用しています。

ただ、以前はそうしたデータ分析に膨大な時間と労力がかかっていた、とデジタルアナリシス室室長の二瓶美帆氏は振り返ります。

「2015年までは、セキュリティの関係でサーバ上のデータを直接触れず、主に Access とExcel を利用するという分析環境でした。各部署からCSVでデータをもらって Excel のアドオンを駆使して分析したり、Access にデータを入れてSQLで集計したりしていたため、Excel のメモリをオーバーする、計算に数十分かかるといった問題が多々ありました。当時は各タイトル分析専門の組織も無く個人で依頼を受けていたので、各部署から分析を依頼されるタイトル数が増えてくると対応しきれなくなり、BI ツールの導入を考えるようになりました」(二瓶氏)

Tableau の導入・運用環境について

Tableauの有用性を社内に浸透させユーザーを拡大

「各社の BI ツールを片っ端から触ってみた」という二瓶氏は、最終的に Tableau の導入を決断。同氏を含む数名が Tableau Creator の利用を開始し、分析するタイトル数を徐々に増やしていきました。

「数タイトルのデータを可視化したところ、その噂が社内に広まって、『自分たちのタイトルでも使えるの?』と興味をもってくれる人が出てきました。その一方で、『専門的な知識がないと使えないんでしょう?』といわれることもよくありました」(二瓶氏)

導入時、「直感的に操作できてとっつきやすいこと」を Tableau のメリットの1つととらえ、皆で使えるようになりたいと考えていた二瓶氏は、全社的に希望者を募り、データ分析の勉強会を複数回開催。毎回50~70名程度の参加者に対し、Tableau の画面を見せて使い方を教えつつ、「データ分析とは、これまでゲーム開発で大切にしてきた経験や勘の正しさを裏づけ、後押しするもの」という考え方を浸透させていったそうです。

そうした活動が功を奏し、開発チームはもちろん他の部署でも、Tableau に興味を持つ従業員が次第に増えていきました。現在、デジタルアナリシス室でデータアナリストとして活躍する小国里菜氏もまさにその1人です。

「事業管理部門に所属していたのですが、社内研修で初めて Tableau を触って、『こんなことができるんだ』と衝撃を受けました。当時の上司の理解を得て Tableau を試験導入し、有志の勉強会などで知識やスキルを身に付けた後、希望して現部署へ異動しました。ですから私の場合、Tableau に触れたからこそデータアナリストになりたいと思い、実際になったといっても過言ではありません」(小国氏)

ユーザー数は、Tableau Creator が各部門に数名ずつ、Tableau Viewer が全社で数百名まで増加。それに連動し、活用の規模や領域が拡大していったのです。

 

開発中タイトルのテストプレイ履歴を一覧化。網羅性の確認が容易に。

開発中タイトルのテストプレイ履歴を一覧化。網羅性の確認が容易に。

社内研修で初めて Tableau を触り受けた衝撃からデータアナリストへ

私の場合、Tableau に触れたからこそデータアナリストになりたいと思い、実際になったといっても過言ではありません

Tableau 選定の理由について

可視化の速さ、各種データとの連携性の高さ

各種 BI ツールを比較検討した二瓶氏が、Tableau の優位性としてまず感じたのが、可視化のスピードの速さです。

「『ああしよう、こうしよう』と悩む間もなく可視化してくれるレスポンスの速さに驚きました」(二瓶氏)

もう1つ評価したポイントが、さまざまな形式のデータと接続でき、ファイル同士を結合させた分析などを容易に行えることです。

「データベースにも直接つなげられるし、CSV など各種ファイルにも接続できる。ヘッダーを結合した、いわゆる “Excel っぽい Excel ”のデータでもすぐ分析用に加工して可視化できる。社内に散在する多様かつ膨大なデータの活用方法を模索していた当社にとって、そういう点でも最適だと思いました」(二瓶氏)

Tableau の導入効果について

データ可視化・分析の効率化で作業時間が10分の1に

「データ分析という仕事は、『最新の状態でもう1回分析して』と頼まれることが非常に多く、その際にミスもよく発生します。Tableau なら最新のデータを瞬時に可視化できるので、Access や Excel で泣きながら仕事をしていた頃と比べ、作業時間は本当に10分の1ぐらいになりました」(二瓶氏)

二瓶氏がそう話すように、Tableau は開発の現場で大きな威力を発揮。常時数十本程度の開発中・製品版タイトルのプレイデータをデジタルアナリシス室のメンバーで分析し、開発チームに結果を共有したり、課題解決策を提案したりしています。

デジタルアナリシス室の宮下平氏は、家庭用ゲームタイトルにおいて、離脱ポイントやクエストプレイ動向、使用アイテム状況に至るまで、膨大な種類・量のデータを効率的に可視化・分析できるメリットは非常に大きい、と話します。

「たとえば以前は、品質管理部門が開発中タイトルをチェックする際、テスターによる実際のプレイを動画に撮り、手作業で膨大なプレイ履歴を記録していました。今は、テストプレイデータが Tableau のダッシュボードで可視化されるので、はるかに網羅的・効率的にチェックできます。あるタイトルでは、4か月間で約1,000時間もの削減効果があり、開発チームにとっても私たちにとっても想定以上の結果でした。」(宮下氏)

これまで感覚と積み重ねに頼らざるを得なかった部分がデータによって効率化されたことは、“匠の技 ”を持つ開発チームのメンバーにも好意的に受け止められているようです。

「Tableau はビジュアル面でも魅力的な可視化ができるので、各現場の状況や嗜好に合わせた提案が可能となり、逆に『こういう可視化、分析はできないか?』と相談を受けるケースも増えてきました。そういった開発の現場とのコミュニケーションは、私たちデータアナリストにとって非常にいい刺激になっています」(小国氏)

感覚と積み重ねに頼らざるを得なかった部分がデータによって効率化

今は、テストプレイデータが Tableau のダッシュボードで可視化されるので、はるかに網羅的・効率的にチェックできます。あるタイトルでは、4か月間で約1,000時間もの削減効果があり、開発チームにとっても私たちにとっても想定以上の結果でした。

今後の展開について

データ分析効率化で生まれた時間で本来の業務に集中

同社におけるデータ活用の領域は、ゲーム開発だけに留まりません。人事関連部門では、ゲーム開発プロジェクトへの各職種の人材配置や就業状況を分析して適正化しています。経営企画部門では、同社コンテンツの国・地域別の売上の傾向などを可視化して予実を管理、データの準備工程では Tableau Data Management Add-on のライセンスに含まれる Tableau Prep Conductor を利用してデータ加工を自動化し、日時でデータを最新化することで業務効率を向上させています。

「また、『CAPCOM ID』によるユーザー管理のシステムとして Salesforce を導入し、Tableau との連携を進めています。現状ではAPIで連携して Big Query にデータを格納した上で、Tableau での可視化を行っていますが、直接可視化できるようにするため、CDPの導入を計画しています。

加えて、オンプレミスの Tableau Server 主体で5年以上運用してきましたが、容量・スペック等の関係で、現在 Tableau Cloud への移行も進めています。他にも、他部門に提供する分析環境として、迅速なクロス集計が可能な Looker という BI ツールも並行導入しており、各部門のニーズに合わせた提供を行っています。今後も増加、多様化する各部門の需要に対応しながら分析データの活用を推進していく予定です」(二瓶氏)「従業員それぞれが専門的なスキルや知識、豊富な経験を持っているのが当社の強み。データを活用することで、その強みをより効果的に発揮できるようになりました。今後も、最近社内で発足した Tableau ユーザーコミュニティなどを通じて、活用の幅や文化をどんどん広げていきたいと考えています」(宮下氏)

二瓶氏は、「データ分析の効率化によって生まれた時間を、改善策の提案など、アナリストとしての本来の業務に使えるようになった」と述べた上で、最後をこう締めくくりました。

「Tableau の機能を駆使したデータ分析や改善提案に対して、開発チームから『やっぱり分析の専門家に任せて良かった』といわれたのが本当に嬉しかった。私1人で Excel を使っていた頃を思い出すと感慨深いですし、Tableau を導入したことは、私のキャリアにおいてはもちろん、会社の分析文化にとっても非常に有意義だったと思っています」(二瓶氏) 

 

箱ひげ図をアレンジしたプレイ時間分布。傾向が一目でわかるよう工夫。

箱ひげ図をアレンジしたプレイ時間分布。傾向が一目でわかるよう工夫。

データ分析の効率化によって生まれた時間を本来の業務に使えるように

Tableau の機能を駆使したデータ分析や改善提案に対して、開発チームから『やっぱり分析の専門家に任せて良かった』といわれたのが本当に嬉しかった。私1人で Excel を使っていた頃を思い出すと感慨深いですし、Tableau を導入したことは、私のキャリアにおいてはもちろん、会社の分析文化にとっても非常に有意義だったと思っています

※ 本事例は2023年2月時点の情報です

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